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ドキュメンタリー音楽:CD-ROM「デラクロア作品集」

Synforest SF-115
1998.11.19 リリース
 

アーティスト「ミッシェル・デラクロア」

ミッシェル・デラクロア氏は1933年2月26日パリに生まれた画家。一貫してパリの街を描き続けていますが、その街は今の近代的な大都会ではなく、自分が子供のころ過ごした第二次世界大戦時のパリ、そして乳母から繰り返し話を聞いた第一次世界大戦以前のパリが混ざり合った「その頃のパリ」
キャンバスに描き出されているのは、馬車が走り、女の人は長いドレスを着て、男の人はシルクハットをかぶるノスタルジックな光景です。
その作品は、世界中のたくさんのファンを魅了し、多くのコレクターや美術館に所有されています。

PC用CD-ROM「デラクロア作品集」

デラクロア氏の作品約100点が画面に展開する、SYNFOREST社制作のすばらしいCD-ROMです。デラクロア氏は「アーティストとは、とても内向的で孤独」で、静かなスタジオにひとりぼっちでいる時「キャンバスが唯一世界とコミュニケーションを取り、係りをもつ手段」で、作品がCD-ROM化されることで、「大きな扉が世界に向けて開かれるような気持ち」とメッセージを寄せています。残念ながら、この製品自体は古いバージョンのOS対応ということもあって、2002年に廃盤になってしまいましたが、ぜひバージョンアップして再発してほしいと思います。

絵をみているだけでも楽しいですが、このCD-ROMにはいろいろと楽しい仕掛けがあります。
起動するとまず、明るいギャラリーの映像があらわれます。
これは実際にデラクロア氏の作品を扱っているAxelle Fine Arts Galerie Sohoという、ニューヨークのソーホーにあるギャラリーをモデルにしたもので、ギャラリーの中の絵や看板をクリックすることでみたい画面を呼び出すという、楽しいインターフェイスです。

ギャラリーは地上3階地下1階建てになっていて、1階ではサイトマップのほか、作品をテーマ別にスライドショーにしたメニューを選べます。地下1階は、代表的な絵を取り上げて、特定の部分をクリックするとそこがクローズアップされるという、「クローズアップコンテンツ」。臨場感を高めるためにBGMも喧騒などが入っていて、なかなか凝った作りになっています。
2階は、インデックスからみたい作品を選んだり画面に効果をつけたスライドショーをみたりといったメインコンテンツの フロア。
3階には3枚の額があって、1枚はデラクロア氏の写真です。
これは、デラクロア氏のプロフィールやメッセージを見るためのボタンです。
その隣の額は、羽毛田さんのプロフィールを見るためのボタンになっています。
このCD-ROMは1998年の作品なので、1995年から3年間の代表作品が載っていて、今のWorks紹介とはまたちがって、なかなか興味深いです。
一番気になるのが、「バラエティー/吉本新喜劇 音楽」の一行。えっ!どんな曲だ?!このころは、CM曲もいっぱい作ってたんですね〜。ふむふむ。

私のデラクロア体験

このCDの存在は、羽毛田さんのファンサイト「HAKETA Position」のインタビューで羽毛田さんが話しているのを見て知ったのですが、ある日電車の中で、地元でデラクロア氏の作品の展覧会が開かれるという中吊り広告を見て、さっそくでかけました。実際の作品をみた後でCD-ROMを買ったわけで、感激もひとしおという感じでした。
ちょうどアメリカ同時多発テロから間もない頃で、テロに衝撃を受けたデラクロア氏が描き上げたばかりという絵が1枚、会場に飾られていました。とても同じ人の作品とは思えない、暗く絶望的な色調は氏の混乱した心境を表しているようでした。

収録曲

それぞれのフロアではBGMを操作する音符のついたスピーカー型のボタンがあって、7曲の収録曲の中から好きなものを選び、ループさせることができます。
音楽は別エンジンになっていて単独で聴くことができるので、PCで仕事中などのときは、バックグラウンドで音楽だけ流すことができます。私もかなり活用しています。

1 ムーラン・ルージュの歌
「ムーラン・ルージュの歌」という名前は知らなくても、「ソ(低)/ドーミド/ソ(高)ー//ソ(低)/ドーレシ(低)/ラ(低)/ソ(低)ー」というメロディーは知ってる人も多いスタンダードな曲。
オルゴールのように繊細な高音のピアノの伴奏に、アコーディオン、そしてバイオリンが合流します。アコーディオンを弾いてるのは、ナント羽毛田さん!
ゆったりしたメロディーを聴いていると、おだやかな気持ちに…

2 私の心はヴァイオリン
これもシャンソンの有名な曲。小塚泰さんのバイオリンが艶っぽくメロディーを奏で、ピアノとアコーディオンがバッキング。バイオリンがまさに「歌って」います。
アコーディオンのソロパートもあります。羽毛田さんがアコーディオン弾いてるところ、見てみたい。

3 聞かせてよ愛の言葉を
これもシャンソンの名曲。「ミーミ/レーレ/ドー//レドレ/ミレド/ラ(低)ー///ファーファ/ミーミ/レー/ミレミ/ファミレ/ラー(低)/シー(低)//」という三拍子の曲です。バッキングは、ハープの音色(シンセ?)。後半、アコーディオンをグリッサンドのように弾くところがあって、それがとってもいい感じ。

4 マルソーの夢
シャンソンの名曲の間で、すっかりパリの風情をかもし出していますが、実は羽毛田さんのオリジナル曲。映画でみたことのある、昔のヨーロッパの移動遊園地を思い出してしまうストリートオルガンの音色のかわいいワルツ。シンセサイザーが「シュー」とか「ポン」とか、いろいろな楽しい音色を出しています。

5 絵画の森
これも羽毛田さんのオリジナルで、ピアノソロ曲。すばらしい曲です。
その繊細さは、たとえて言えばガラスのピアノ線でできたピアノで弾いてるよう。
言葉では表しにくいんだけど、聴いてると「ここ」ではないどこか遠い空間に行ってしまうんです。
こんな曲がどうやってできたのか、どうしても知りたくて羽毛田さんに聞いてみました。もうずいぶん前のお仕事なので、「なつかしいなぁ〜」と言いつつも
「作ったときのことは、よく覚えていませんが、たしか即興演奏的につくった覚えがあります。美術館で絵をみているときに、流れていたらいいだろうになあといった気分でピアノを弾きながら、つくったような記憶が。」というお話をしてくれました。こんな曲を聴きながら絵をみていたら、美術館出られなくなっちゃうだろうな。

6 バラ色の人生
シャンソンの名歌手エディット・ピアフの代表曲「ラ・ヴィ・アン・ローズ」です。
アコースティックピアノとバイオリンのデュエット。
ピアノもバイオリンもとっても「色気」のある音で、気持ちよさそうに歌ってる感じです。

7 パリの屋根の下
CD-ROMを立ち上げると、最初にこの曲が流れます。これもシャンソンの有名な曲。ピアノの伴奏がとっても豊かな感じで、私のお気に入りです。アコーディオンのメロがストリートミュージックの雰囲気で、すべるように流れます。
これをBGMに絵をみていると、絵の中の人や物が動き出しそうな気が…。

MUSICIANS

Accordion, Acoustic Piano 羽毛田丈史
Violin 小塚 泰

先日(1月31日)日本テレビ系で放送された印象派画家ベルト・モリゾのドキュメンタリーの音楽といい、このデラクロア作品集といい、羽毛田さんの音楽は絵との相性がとてもいいと思います。絵は平面のものですが、羽毛田さんの音楽がそれに奥行きを与えるという感じ、確かにあります。(kingyo 040216)

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