サントラCDレポート(TVドラマ):
フジテレビ系火曜ドラマ「編集王」オリジナル・サウンドトラック
Epic Records ESCB-2189
2000.12.6 リリース
ドラマ「編集王」
「20世紀最後のドラマ」として2000年10月から12月までフジテレビ系で放送された、ネプチューンの原田泰造さんの初主演作。
「あしたのジョー」にあこがれて、中学卒業後上京、ボクシングに打ち込んだものの、網膜はく離でリタイアを余儀なくされた主人公・桃井環八が、同郷の先輩青梅(中山秀征さん)に誘われて、出版社「大学館」(!)の発行するコミック誌「ヤングシャウト」の編集部という新しいフィールドで完全燃焼をめざす物語。
環八があこがれる大学館社長令嬢で編集者の香川夏見に菊川怜さん、先輩編集者に京野ことみさん、真中瞳さん、そして高橋克美&八嶋智人のトリビアコンビも出演。
編集長にはベテランの蟹江敬三さん。環八を気に入る女性漫画家に大竹しのぶさん。実際に「あしたのジョー」のアニメ映画で力石徹の声優をつとめた細川俊之さんが、大学館社長を演じたそうです。
オリジナルサウンドトラック
劇伴音楽は、羽毛田さんとBLACK BOTTOM BRASS BANDが担当。“all that brass!”という感じのBLACK BOTTOMの曲に対して、羽毛田さんも管楽器のスペシャリストたちを起用して、ちょっと違ったアプローチで「管の競演」を繰り広げています。幼少の頃から管楽器のトリコの私にとっては、実に楽しいアルバムです。
私はこのドラマを観ていないので、純粋に音楽CDとして聴いてみました。ラマを知らないのだから、最初に聴いたときは全く知らない曲ばかりのはずでした…がっ。
聴いてびっくり。聴いたことのある曲が何曲も。それほど、あちこちの番組で使われているのです。(つい数日前にも1曲目の“LOOP8”がテレビから流れていました。)
羽毛田さん担当の曲は、タイトルが青字になっています。
01 LOOP 8
鍵盤、弦のイメージが強い羽毛田さんですが、ブラス曲もとってもユニーク。
ブラスの間にはさまる西海さんのバンジョーソロが、曲のアクセントに。ラムとともにリズムをきざむのが、ハモンドオルガンの音。
70年代ロックにはまった羽毛田さんらしく、電子音楽系の楽曲ではよくハモンドが使われてます。この曲は、テレビをそこそこ観る人ならきっと聴いたことがあるはず。バラエティ番組でものすごくよく使われています。
02 明日はくんのか!
ハンドクラップのリズムをバックにブラスが吹きまくる。ブラスのテクニックがすごいです。
BLACK BOTTOMのMONKEYさんの曲。
03 NEW LOVERS
レゲエ調なリズムの明るいブラス曲。シンセドラムがアクセントに。トランペットとトロンボーンのハーモニーがいい感じです。やはりハモンドが、ドラムとともに陽気にリズムを刻みます。
04 星空の石ころ
トランペットのメロディに、スーザホンがベースのようにバッキング。途中のソロはバリトンサックスだと思うのですが、ふだんなかなか単独で音を聴けないので、うれしい。MONKEYさんの作品。
05 雨と土
ラヴェルの「ボレロ」のリズム(ダン・ダカダ・ダン・ダカダ・ダン・ダカダ・ダン・ダン)を少しアップテンポにしたパーカッションをバックに、ブラスが美しくハモリます。
いや〜、ブラスっていいですねと思ってしまう名曲です。BLACK BOTTOMのYASSYさんの作品。
06 PURE SONG
これもすごく耳になじんでいる曲。サントラを聴いたとき、「これ羽毛田さんの曲だったのか!」とびっくりしました。
「ドレ/ミーレ/ド/レー/ドレ/ミ/ソ↑/ド/ラー↓」という旋律の、三拍子のスローバラード。羽毛田さんのピアノと西海さんのアコギをバックに、オーボエのメロが切ない。自分で吹いてみたくなります。
途中でメロに合流する笛は、ティン・ホイッスルのようなんですが、誰が吹いているんだろう?
07 TEARS
これもスローバラード。羽毛田さんのやさしいピアノに西海さんのマンドリンが繊細で、06より少し悲しげな曲調。私のアヤシイ耳で聴き取ったところによると、最初のメロはイングリッシュ・ホルンだと思います。
「ホルン」とはいえ、オーボエと同じダブル・リード楽器で音色も似てるけど、ちょっと音が丸くて5度低い。形も似てますが、オーボエより少し長くて、先端の朝顔が球体になってるのが特徴。
08 PURE SONG〜MANDRINE〜
06と同じ旋律で、アコースティックギターのバッキング、メロを西海さんのマンドリンが担当します。よりしみじみとした感じに。
09 HEART OF PAIN
ピアノとオーボエの、やさしく悲しげなメロディのデュエット。
10 TRICK
ここから14までは管楽器を離れて、待ってました!な打ち込み系+アコースティックピアノ。でも、この曲はよく聴くと09のバリエーションなのです。全然違う曲みたい。
羽毛田さんのシンセとアコピ両方堪能できます。
11 RING
ドラム+アコピ+エレキギター+ハモンド。短い曲ですが、とってもスタイリッシュ。ハモンドのグリッサンドがキュイーン、です。
12 CURE
ピアノが同じ旋律を、パーカッションが同じリズム繰り返し、その合間にシンセサイザーとギター、シンセドラムが差し込まれるハードなイメージの曲。
13 CIRCUT
ベースとエレキギターがメインですが、バックにあのなつかしの「シンセポワポワ音」が!
鬼束さんの「眩暈」なんかで使われている、あの「ポワポワ」です。
14 TENSION
「ラシドラシドラシ」という旋律を繰り返すシンセに、エレキベース、力強いタッチで低音を刻むピアノ、パーカッションが合流して同じ旋律、リズムを繰り返し、緊張感が高まります。
今でもニュースやワイドショーの陰惨な事件報道のバックに流れることがめちゃくちゃ多い曲。
15 KANPACHI GO GO
大勢の叫び声で始まるファンキーブラス。「GO GO!」なスピード感。アルトサックスがソロで歌いまくります。スーザホン、大変そう。IGGYさんの作品。
16 イギー GO GO
BLACK BOTTOMのKOOさんの作品。やはり「GO GO!」なスピード感。トロンボーンのソロがかっこいい。やっぱりスーザホン、大変そう。
17 Big Butt Woman
スローテンポなファンキーブラス、ソロはトランペット。MONKEYさんの作品。
18 RODGE GATE
単純なメロディでも、ブラスがハモるとスペシャルな感じに。ブラスのハモリはストリングスなんかに比べると荒削りなんだけど、独特の立体感とツヤがあって、血が騒ぎます(?)。IGGYさんの作品。
19 サスペンス
低音を受け持つスーザホンとバリトンサックスがベースの旋律を繰り返し、その上にほかのブラスが乗っかって歌います。KOOさんの作品。
20 poor house 95
息をいっぱい吹き込んで音を曲げた感じのアルトサックスと、弱音器を駆使したトロンボーンのソロが面白いスローナンバー。MONKEYさんの作品。
21 2丁目のテーマ
ブラスのハーモニーが堪能できるスローナンバー。歌うアルトサックス、とってもよいです。KOOさんの作品。
22 PURE SONG 〜PIANO〜
アコースティックなピアノとギターの“PURE SONG”。ピアノが伴奏で、ギターがメロ担当。
23 TEARS 〜PIANO〜
同じくアコースティックなピアノとギターの“TEARS”。こちらはギターが伴奏で、ピアノがメロ担当。
24 Fall Again 〜PIANO〜
TRICERATOPSが歌う主題曲(TRICERATOPSの和田唄さんが作曲)を羽毛田さんがピアノアレンジ。ピアノソロをしみじみと。やっぱりトリはこれですね。
MUSICIANS
(01,03,06〜14,22,23,24)
Pf: 羽毛田丈史
Guitar(E/A), Banjo, Mandrine: 西海 孝
Drum, Percussion: 楠 均
Trumpet, Flugel: 西村浩二
Trombone: 広原正典
Oboe, English Horn: 柴山 洋
(02, 04, 05, 15〜21)
BLACK BOTTOM BRASS BAND
Trombone: YASSY
Trumpet: KOO
Alto Sax/Baritone Sax: MONKEY
Tenor Sax: IGGY
Bass Drum: ANTON
Snare Drum: S.K.JUN
Sousaphone: TAMOTSU
レポをアップする前に、レンタルでドラマを見ようと思ったのですが、近場で見つからず断念。機会があったら見たいと思います。でも、劇伴を離れて純粋に音楽アルバムとしてとっても楽しめました。管楽器ばんざい!(kingyo 040211)