LE VELVETS コンサート 2015
“魅惑のクラシカル・エンターテイメント”(東京公演2日目)
150912@BUNKAMURA オーチャードホール 投稿者 kingyo
開場 13:30 開演 14:00
ちょっと長い前置き
今年のlive image 15に初登場し、羽毛田さんがニューアルバムのプロデュースとコンサートの音楽監督を担当することになったボーカルグループ“Le Velvets”のコンサートに行ってきました。
サックスやフルートなど吹奏楽器の演奏が趣味なせいか、私は羽毛田さんがプロデュースしたシンガー以外は、一部洋楽をのぞいてほとんど「歌もの」を聴くことがなくて、CDも買うのはインストものがほとんどなのですが、クラシックの声楽だけは別で、オペラも独唱も、そして上手ならミュージカルも大好き、CDもオペラなどたくさん持っています。
友人に何人かプロの声楽家がいるので、そのリサイタルなどもよく聴きに行ったり。
なんで声楽がこんなに好きなのかなとよくよく考えてみたら、たぶん自分が吹奏楽器を鳴らすように、声楽家は自分の体を楽器のように鳴らすからかなと思いました。「歌もの」ではなく、ある意味インストで、美しい音色でのどを思いきり開けて楽器を鳴らす時の陶酔感が、声楽家が声を張る時の感じと似ているから?だから惹かれるんじゃないかと思います。
だから、今年の1月の“live image cinema”でメンバーの一人の宮原浩暢さんのバリトンで“NELLA FANTASIA”や“Unchained Melody”を聴いたり、“live image 15”で5人で歌う“'O SOLE MIO”や“Time to Say Goodbye”を聴いたとき、あぁこんなグループが出てきてうれしいなと思ったし、さらに羽毛田さんがコンサートやアルバムのプロデュースを手掛けると知って、とてもワクワクしました。で、さっそく早めにコンサートのチケットを予約しました。
でも、その時は「ちょっと興味がある」程度だったので、座席はSS、S、A、Bとあるうちの、なんとA席。
確かに私はイケメンは好きだし、教育と訓練を受けた方の声楽は好きだけど、別にS席じゃなくても、音が聴けたらいいかな、ぐらいな感じ。
コンサートのことも、ぎりぎりまであまり考えてなくて、9月に入ってようやく「あ、ベルベッツもうすぐだな」と少しワクワクしはじめました。
ベルベッツに、というより、こんな感じのクラシックとポピュラーの中間地点にいるユニットを、羽毛田さんはどうプロデュースするのかな、ということにむしろ興味がありました。
それが、9月12日までの私。
そして今、LE VELVETSのファンクラブに入会してしまった自分がいる…。
自分史上、だれかのファンクラブに入ったのはこれが初めて。
なぜ入ったかというと、もっと彼らの歌が聴きたいと思ったからです。
ファンクラブに入れば、クローズドのライブもあるだろうし、個々の活動の情報も手に入るだろうし。
一番思ったのは、あまり一般ウケしないかもしれない、彼らが大学で学んだようなガッツリクラシック寄りのプログラムをぜひ聴いてみたい、そんなコンサートがあったら、ぜひ行ってみたいということでした。
ただ、コンサートが終わった段階ではまだ、ファンクラブに入ろうとまでは思っていませんでした。
ロビーで受付してたけど、素通りする感じで。
実際に「入ろう!」と決心したのは、コンサートの時に買った新アルバム「NEO CLASSIC」を、翌日家でじっくり聴いたとき。1巡目聴き終わって、一緒に行った友達に「入ろかな…」とメールしていました。その後、何回も聴いて、5巡目ぐらいにはもう「明日郵便局に行こう」と固く決心。
羽毛田さんにも、「これめちゃくちゃいい!」と伝えずにはいられず、すぐメールしました。「これ、エンドレスで行ける!」と。
これが楽器なら、さすがに10回ぐらい聴いたら少し飽きてきて、別なものを聴きたくなるところだけど、人の声は不思議です。
いいもの、自分にフィットしたものは何回聴いても大丈夫。無機物(楽器)と有機物(人体)の違いなのかも。聴くたびに、不思議な体温を感じます。
もう一つすごいと思ったのが、彼らがCDとほぼ同じに、コンサートでも歌っていたということでした。
音のつなぎ方とか、ふしまわしなど、聴いていると見事に前日のコンサートが蘇ってきました。
先に誰がどこを歌っている、というのがだいたいわかっていたので、アルバムを聴いていても、これはこの人だなというのがわかってより楽しめました。
メンバーの5人は、「音楽大学出身で身長180cm以上」というオーディション時の条件のみが共通点で、出身大学もそれぞれ違うし、年齢も29歳(佐藤隆紀さん)から36歳(宮原浩暢さん)まで、出身地も違って、声楽家としての成り立ちはいろいろですが、声の質も全然違います。
テノールの三人も、バリトンの二人もそれぞれ全然違っていて、それぞれが得意なところをカバーすることによっていろんなジャンル、タイプの楽曲が歌えるのだと思いました。
たとえば、テノールの佐藤隆紀さんは「ザッツ・テノール」という感じ。
live imageで「オーソーーーーーーーーーーレミオー」と強じんなのどを聴かせましたが、とにかくのどまわりの筋肉が新素材かなにかでできてる?というぐらい安定した、太い声です。低音も得意みたい。
見た目は「小学校の時、同じクラスにこんな子いた!」となつかしくなるような男の子顔。(でも、意外にこのタイプがよくモテていたっけ)
そして、佐賀龍彦さんは、するどく硬質な感じのテノール。ここぞというところで、キーンと印象的に入ってきます。高めの音域が魅力的。役者さんでもあるらしい。グループ唯一の関西人(京都出身で京都市芸大出身)で、MCの時ふっと関西弁のイントネーションが顔を出す(のは羽毛田さんと同じ?)。
対して、日野真一郎さん(live imageのとき「トントントントン日野の二トン、日野真一郎です」と自己紹介していた)は、とてもやわらかくて少しエアリーで、ポップスなども自然に歌えるめずらしいタイプ。そして、なによりも特徴的なのが、ファルセットで女の人の音域が歌えるということです。この日野さんの高音は、いろんな曲で登場します。
バリトンの二人は、ともに東京藝術大学出身。学部は違うけど、当サイト(困った時の)作画担当のみなぞう画伯の先輩だと思うとかなり親近感がわいたりして。
同じ大学出身ながら、この二人も全然違う声です。
最年長の宮原浩暢さんは「ザッツ・バリトン」。私が一番好きなタイプの声です。
うちの近所に、藝大出身の声楽家のご夫婦がいるのですが、そのご主人が宮原さんタイプの声のバリトンで、私はふつうに名前を呼ばれただけで心がざわざわします。
オペラで聴きたい!と思う声でもあり、今回のアルバムに収録されているようなタンゴなどでもすごく映える声。
対して、グループで2番目に若い30歳の黒川拓哉さんは、テノール?と思うくらいやわらかくて、宮原さんとは全く違ったタイプ。でも、低音になると声質が変わるみたいで、もっと低音をじっくり聴いてみたい気がしました。
ここのところメンバーのツイッターなどを観察していましたが、キャラ的には黒川さんが一番つっこみどころがありそう。
キラキラとした王子様の皮の下に、何か別なものがひそんでいる気がする…。
そして、この二人はどちらも水泳が大変得意らしく、宮原さんは静岡で、黒川さんは福井でそれぞれ優秀な選手だったそうです。
いったいどの段階で声楽家を目指そうと思ったんだろう?確かに水泳は、声楽や吹奏楽器の人にはいいトレーニングになるけれど。
えらく前置きが長くなってしまったけど、今回の羽毛田さんプロデュースによる「新生ベルベッツ」のキモは何と言っても「きみたちはコーラスグループではない、5人のソリストの集まりだ!」です。
それぞれのメンバーの個性はぜひぜひ、ライブやアルバムを語るうえで押さえておきたいところなのです。
そして、コンサートのレポートです
今回は遠慮気味にA席を買ってしまったので、なんと「オーチャードホールにそんなところあったの?」という3階席でした。
高所恐怖症の友達が前を見た途端悲鳴を上げたほどの高度。
このままムササビのようにまっすぐダイブすれば羽毛田さんが弾くベーゼンドルファーの上に着地できる、ピアノ席真正面の好位置ではありましたが、視覚的にはほとんど双眼鏡に頼らなければならないぐらいはるか遠くにステージが。
ステージでの動向はちょっと記憶が薄れ気味というか、あまりわかっていなかったので、ファンクラブ入会のきっかけになった新アルバム「NEO CLASSIC」のアルバムレポもからめつつ書いてみたいと思います。
2015年9月12日・東京3daysの2日目
東京公演は金・土・日の3daysでしたが、友達の希望で中日の9月12日土曜日に行くことにしました。
ちょうど2日前の9月10日に、大雨のため鬼怒川が決壊して甚大な被害が出たばかりだったので、大変な思いをしている方がたくさんいるのに、コンサートに出掛けるのはなんだか違和感があるな、、、でも、これだけ連続して災害が起こると、本当に明日は我が身というか、次は自分に降りかかるかもしれないと覚悟して、楽しめる時は楽しむべきかもしれないななどと思いつつ、また蒸し暑くなった中を渋谷に向かいました。
今回は一緒にボランティア演奏活動をしているフルーティストの友達とともに参加。
彼女は今でこそ趣味でフルートを吹いていますが、もともと音楽大学の出身。私と同じく声楽系が大好きなので、始まる前からふたりとも平常心が吹っ飛び気味でした。
BUNKAMURAの中にあるカフェ・ドゥマゴで友達と待ち合わせ、昼ご飯を食べて開演の2時直前にオーチャードホールに向かいました。
席は3階だったので、何度も来ているオーチャードホールながら、まったく足を踏み入れたことのない領域へ、ひたすら階段を上がる…
ロビーや階段は、なぜかスモークがもれてきたように白くけむっていました。そして、いつになくいいにおいが漂っていました。MCで日野さんが香水をプロデュースしたと言っていたので、その香りだったのかな?と後で思いました。
上へ上へと上がっていくと、途中でパンフレット(2000円)を売っていたので二人ともそれぞれに購入。
特に「絶対買わなきゃ!」と思ったわけでもなく、軽い気持ちで買ったのですが、これが大金星。
メンバーのプロフィールのほか、今回のセットと曲目解説、羽毛田さんのインタビュー、葉加瀬太郎さんとメンバーとの対談など盛りだくさんで、ベルベッツのことを知るうえで貴重な資料となりました。
だから、これから名古屋、大阪の公演に行く方がいたらぜひ購入をお勧めしたい。理解が深まります。
席に着くと、最初ステージは真っ暗で、3階から双眼鏡で見たら、下手の端っこあたりに小さな楽譜を見るためのライトがついてました。のちにこれは、ピアノ席であることがわかりました。
私たちの席は、すごーく高いけど羽毛田さんのピアノ席の真正面だったのです。
そして開演〜NELLA FANTASIA
格調高く音楽が流れたあと、それに代わって澄んだピアノの音が…
あ!羽毛田さんがいつの間にかピアノの前に座って、1曲目の「NELLA FANTASIA」の前奏を弾き始めていました。
だんだんステージ上の人々のシルエットが浮かび上がり、5人の姿もクリアに。
ちなみに、今回はメインアーティストが5人もいてダンスなどもあるので、サポートメンバーの位置はこんな感じ。開始時の5人の立ち位置とともに図にしてみました。
サポートメンバーはピアノの羽毛田さんのほか、
パーカッション 梯郁夫さん
ヴァイオリン 伊能修さん(Vl.1)・森本安弘さん(Vl.2)
ヴィオラ 原田友一さん
チェロ 結城貴弘さん
ベース 一本茂樹さん
ギター 遠山哲朗さん
という、ステージ上全員男の世界!でした。
「NELLA FANTASIA」はアルバムでも一番最初に出てきます。
佐藤さんからスタートして、1人ずつ交代で歌うので、ここですでにそれぞれの声の特徴が分かり始めます。
CDは曲順を見ずにいきなり聴き始めたら、コンサートの通りにピアノの前奏が聞こえたので、感動しました。このピアノがとってもきれい。
ひとりひとりの声を認識することで、その後のコーラスがとても引き立つ相乗効果になっているんだな、と気が付いた曲です。
エンニオ・モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」に歌詞が付いたものですが、とても美しいけどシンプルで短い曲なので、感情を揺さぶるほど盛り上げていくのは本当に歌唱力が必要。これぞベルベッツ、という曲だと思います。
2曲目〜Hallelujah
神をたたえる歌「ハレルヤ」。といってもクラシックではなく、レナード・コーエンの「Hallelujah」でした。これはコンサートが始まったばかりで頭に血が上っていた私がはっと我に返った曲。「ハーレルーヤ」のコーラス部分のあまりの美しさに目が覚めた感じでした。今回のセットの中でも、1,2を争う好きな曲でした。
残念ながら、新アルバムには入っていません。
3曲目の前に、羽毛田さん紹介
暗闇でメモったので判読不能ですが、私の記憶ではここでMCが入って羽毛田さんを紹介したと思います。
「このコンサートの音楽監督をしてくださった上、新しいアルバムのプロデュースもしてくださった羽毛田丈史さんです」みたいな感じだったと思います。
そして、今日はアルバムの曲、全部やります!と日野さんが元気よく手を振り回して言ったのもここだったかな?
日野さんは、ダンスの時もそうだけど身振り手振りの大きな人みたい。
3曲目〜Unchained melody
live image cinemaで宮原さんがソロで歌ったときは映画「ゴースト」の挿入歌として紹介されましたが、本来はもっと古い「Unchained」という映画の主題歌として作られ、いろいろな歌手にカバーされた有名な曲。
誰がどこを歌ったかは覚えてない、、、
4曲目〜Smoke gets in your eyes
スタンダードナンバーの「煙が目にしみる」。ソロの切々とした感じとその後のコーラスの美しさが見事でしたが、なんとなく彼らは英語のナンバーよりイタリア語とか、または日本語とか、母音がはっきりした歌の方がきれいに聞こえてくる気がしました。英語って、音声学的に消える音が多いので、日本人だと声楽の発声に載せるのが難しいのかも?
この曲はむしろバックのサポートメンバーの演奏にしびれました。結城さんのあまりにも美しいチェロソロ、としっかりメモに書かれていました。
5曲目〜Vivere
対して、この曲は「1,2を争う好きな曲」の片方かも。
彼らの声の力強さと美しいハーモニーが存分に生かされる曲だと思いました。
うわーん、アルバムに入れてほしかった!残念ながら入ってません。
「Vivere」とは、イタリア語で「生きる」という意味だそうですが、失意の時に聞いたら絶対元気が出そう。
この曲は、それぞれの声の特質がとても生かされていて、色彩の豊かさを音に感じます。バリトンの黒川さんと宮原さんのデュエット、テノールの日野さんと佐藤さんのデュエットの部分があったと思うのだけど、それぞれ太い声の宮原さんとやわらかい黒川さん(バリトン)、やわらかい日野さんと太い佐藤さん(テノール)の組み合わせが絶妙。そこに、キーンと突き刺すように芯のある佐賀さんのテノールが情熱的にとどめを刺す感じ。大好きな1曲です。
ところで、この曲を聴いたときに、私はちょっと「あれ?」と思いました。
なんだかこの曲、同じようなパターンで聴いた気がする、、、
デジャブな感じ。その時はまだ、よく思い出せてなかったのですが…。
家に帰ってアルバムを聴いてるうちに、ようやく思い出しました。
私はベルベッツの歌を前に聴いたことがあると・・・
7年前の2008年、葉加瀬太郎さんがlive imageお休みで、古澤巌さんが出演されていた頃。live imageでの古澤巌さんのパフォーマンスにぞっこんになった友達に誘われて、古澤さんの単独ライブに行ったことがありました。
その時、ゲストで「若き才能あるボーカリストたち」として紹介されていた、やはり声楽出身で長身の若者たちがいたのです。名前は忘れてしまっていたけど、何やら変わった名前だった記憶がありました。そして、彼らの美しいコーラスも、海馬の奥の奥の方に残っていました。
7年前と言えば、ベルベッツが活動を始めた頃。
羽毛田さんに聞いてみたところ、彼らは最初「カメラート(KAMERAD)」という名前だった、とのこと。
そのライブの時のアルバムは「Dandyism」シリーズでしたが、確かに調べてみると「Dandyism Gold」に「REMEMBER featuring KAMERAD(「四季より“春"」より)」と「VIVERE featuring KAMERAD」の2曲が収録されていました。
(このアルバムには羽毛田さんがアレンジしたドラマ「鹿鳴館」のテーマ曲が収録されていたけれど、買っていなかった、、、)
私は、きっとそのコンサートで「Vivere」を聴いたんだと思います。羽毛田さんが出演していたわけではないので、レポも記録もなく確かではないのだけど。
そして、その時もこの曲に感動して、それが頭の中に残っていたのでしょう。
そのキャリアのスタートの頃に、偶然出会っていた彼らがめぐりめぐって羽毛田さんとお仕事をすることになり、今こうして私がライブレポートを書くことになるとは。
そのコンサートでは、5人ではなく3人だったような気がするんだけど、これもあやふや。もし3人だったのなら、年長の宮原さん、佐賀さん、日野さんだったのかもしれません。
ここでMC
この日の明け方、関東地方で首都直下を思い起こさせるような少し大きな地震がありました。話はそこから始まって、メンバー全員飛び起きたけど、一人だけ起きなかった人がいる…黒川さんでした。
黒川さんは5人の中で最も王子様風な見た目ですが、前に書いたように、どうも見た目と違う中身がつまってるらしい。
「目は覚めたんだけど、起きなかったんです」だったそうです。
私の友達は、終演後に楽屋で見た黒川さんの魔法にかかり、すっかりぞっこんになって「オシメンはくろちゃんに決定!」とか言ってましたが、「違う中身」に気が付いているはず。
羽毛田さんが「コーラスグループではなく、ソリスト5人の集まりと考えよう」と言って、編曲もその方針でされたので、今まで低音で下から支えていたバリトンチームも、ソロなどで声を浮き立たせる場面が多くなったそうです。
それまで黒川さんがご実家のご両親にCDを送っても「あんたは歌っているの?」と言われていたのが、今回はソロがあるよと送ったら、「あんたの声はどれかわからない」と言われたそうな、、私はもう、くろちゃんの声わかります!
このようなプロデューサーの方針から、今回のアルバムは今までの曲もいつもと違うアレンジで収録されている、とのことでした。
やっぱりVivere入れてほしかった、、
6曲目〜ランナウェイ
今回はアルバムを会場で買おうと思っていたので、予習なしで臨んでいたから「ランナウェイ」を歌うと知って「えええ!」と思いました。
確かにコーラスや低音が特徴の歌だけど、ベルベッツが歌うのはちょっと違うんじゃないかな、、と。
でも、始まってびっくり!明るくてさわやかな、エンヤにありそうなストリングスのピチカートの伴奏にのって、佐藤さんの厚いテノールで「ラーンナウェイ」と歌い始めた時、なんだかよくわからないけど、これすごくいい!と思いました。
彼らの声の特質が生かされた分担で、低い声で「ランナウェイっ」や「パッピドゥバドゥバ」というのは宮原さんの担当。ザッツバリトン、ぴったり。
この曲は事前に指示があって、「パッピドゥバドゥバ」と言ったら4つ拍手をしろと言われ、練習したら拍手の前の休符の指示がなかったのでチャチャチャチャチャぽくなってしまいました。でも本番はちゃんと「んチャチャチャチャ」とできて、ベルベッツご満悦。
ベルベッツバージョンの「ランナウェイ」を聴いていると、この曲ってこういうことを言ってたんだな、というのが改めてわかりました。
シャネルズのオリジナルでは、顔を黒く塗った人たちに気を取られすぎて、歌自体があまり耳に入ってなかったのかもしれません。
言葉もはっきり発声するので、日本語の歌はとても伝わりやすいと思いました。
この曲はすっかり羽毛田さんにやられちゃった感じ。
羽毛田さんもどう歌うかノーアイデアだったので、オケをそれぞれに渡して事前オーディションをして、佐藤さんがサビを歌うことになったとか。
羽毛田さん自身もかなり冒険だった曲だそうです。
これを後でアルバムでも聴いたのですが、本当にライブとCDがほぼ同じで、彼らの実力の高さを改めて感じました。
7曲目〜ADAGIO
次の曲は「アルビノーニのアダージョ」でした。私も原曲のCDを持っていてよく知る曲なので、歌になるとどんな感じかなと思いましたが、静かな前半はテノール主体、そして盛り上がっていくにつれて宮原さんのバリバリバリトンが前面に出てきて、最後にトリプルフォルテぐらいでパワー全開の、とても印象的なアダージョでした。
この曲もアルバムに入っていて、何回も聴き返せてうれしい。
ところで、LE VELVETSのお客さんはとても彼らを応援する気持ちが強いのだと思いますが、演奏後の拍手がとっても早いです。
ほとんどの曲には後奏部分がありますが、これが終わるのを待たずに、歌が終わると拍手が始まってしまう。クラシックではありえないけど、より親しみやすい音楽ジャンルであるとすれば、まぁアリなのか。
でも、せっかくのスペシャルバンドなのだから、後奏もしっかり聴きたかった、、
楽器を演奏する人は、自分の出した音の最後のつぶつぶが消えるまで、音を見送るものなのです。聴く人も、最後のつぶつぶが空気の中に消えていく様を感じたいものです。
特に「ADAGIO」では、最後にちょっと息を吸って「アーダージョーッ!」と決めるのですが、この少しの間でフライグ拍手してしまった人がいて、歌っている彼らも一瞬虚を突かれた感じでした。たたいちゃった人も冷汗だったと思うけど。
感動した気持ちを彼らにすぐに伝えたい!と思うのはとてもよくわかるけれど。
バンドメンバー紹介とグッズ紹介
ADAGIOのあと、サポートメンバーの紹介がありました。
羽毛田さんとはお付き合いの長い、パーカッションの梯郁夫さんからはじまり、ギター、ベース、ストリングス、そして最後に羽毛田さんが紹介されました。
ギターは天野さんではなく遠山さんだったけど、昨今の羽毛田さんの心強い仲間、チェロの結城さんとコントラバスの一本さんはばっちりサポート。また個人的にはlive image初回からオーケストライマージュで活躍している伊能修さんが参加されていたのが歓喜!伊能さんのバイオリンの音、とても好きなので。
今回もストリングスチームはすごくて、それぞれ1本ずつでなんでこんな音が出る?というぐらいのボリュームでした。3階まで、ビンビン美しい音が飛んできました。
ギターの遠山哲朗さんは、羽毛田さんとは「ハナミズキ」のサントラでいっしょにお仕事されたことのあるギタリストですが、透き通る音色ですばらしいテクニック。
羽毛田さんのまわりには本当に高レベルのギタリストがたくさんいるなぁと思いました。
そして、次の曲で一部は終わりだからということで、メンバーによるグッズ紹介も。
たぶん、主に佐藤さんと日野さんがやってたような気がするけど、それは遠目なのであまり記憶なし。
ベルベッツのエンブレムの入ったバッグがイチオシだったみたいだけど、その他にもクリアファイルとか、Tシャツとかいろいろありました。
Tシャツを買うと「ベルベッツがあなたの肌に寄り添います」、、、
グッズ紹介は明らかに葉加瀬系でした。
8曲目〜TIME TO SAY GOODBYE
一部最後の曲は、カンツォーネからということで「TIME TO SAY GOODBYE」でした。
新アルバムにもばっちり収録されている、5人の声を存分に堪能できるナンバーです。live image 15でも歌われ、今回のアルバムとはアレンジが違いますが、「image 15」にも収録されました。
最初にバリトンの宮原さん、そして黒川さんがイタリア語で歌い始め、英語の部分に入って佐藤さんがメインを豪快に歌い、そこに佐賀さんがハモり、日野さんが女声音域の高音で合わせる。それをバリトンの二人が下から支えるというまさに「ベルベッツ・シフト」の曲。誰が欠けても成り立たないハーモニーです。
ところで、レポは書けずじまいだったけど、今年の3月に行った宮本笑里さんのコンサート「宮本笑里 with friends」で、ゲストの平原綾香さんが「ひとりTIME TO SAY GOODBYE」を見事に歌いました。サラ・ブライトマンのバージョンで、つまり男の人と女の人が交互に歌うのだけど、平原綾香さんの驚異の音域でどちらも歌ってしまいました。これをどこかに書いておきたいと思ったので、今書きます。
もしかすると、日野さんならできるかも?
休憩時間
さて、それやこれやで休憩時間。
一部ですっかり魔法にかかった私たちは、まず物販を見て何か買ってから、トイレに行こうという計画を立てました。
でも、売り場のある2階まで行ってみてびっくり!
物販の前にはとてもこの休憩時間でははけると思えないほどの長蛇の列が。
「これはムリだね、帰りにしよう!」とトイレに集中することにしましたが、これもまた、どこも長蛇の列。うろうろしていてはだめだと、1ヶ所に決めて、じっと順番を待つことにしました。やっぱり二部は万全の態勢で臨みたいし。
ところで、開場の時からなんとなく気が付いていましたが、この日のお客さんはものすごく年齢層が高い!
たぶん、開演が2時という昼間のコンサートだということも影響していたのかもしれません。
だいたい、60代から70代、さらに80代ぐらいの方も多かったような。女性が多かったですが、ご夫婦で来ている方も多かったです。
私も慰問コンサートでは70代から90代の年齢の方々の前で演奏するのですが、この世代は本当に音楽好きの方が多くて、その熱っぽさはもしかすると私たちやもっと若い世代の人たちの比ではないのかもしれない、といつも思います。
音楽を自由に楽しむことのできなかった戦争期のあとの良い音楽があふれていた昭和時代、耳もとても肥えている世代です。うちの両親もそうでしたが、いろんな音楽を聴いて、子どもたちには楽器を持たせてくれました。
その世代の人たちにこんなにも支持されているのは、ベルベッツが質の高い音楽を提供している証拠だなと思いました。でも気取っていない気さくな感じが、とても年配の方々に受け入れられやすいのでしょう。
二部〜9曲目 Seasons of Love(ミュージカル「RENT」より)
二部が始まり、バンドメンバーが登場して着席。
羽毛田さんのピアノの前奏が始まると、背後の赤い幕が開いて、5人が登場しました。
「Seasons of Love」はニューヨークを舞台にしたミュージカル「RENT」の中の曲で、昔から聞いたことのある曲でしたが、キリンの缶コーヒーのCM曲としてのほうが印象が強いです。ピアノのイントロがなんとも言えず良い感じの曲。
「52万5600分(1年)を愛で数えよう」と言っている歌だそうですが、この数字を歌いながら発音するの難しそう。全体を通じて、日野さんの高音がとても際立つ曲でした。コーラス部分もすごく好きです。今回のアルバムには入っていないのだけど。
10曲目〜闇が広がる(ミュージカル「エリザベート」より)
テノールの佐藤さんがミュージカル「エリザベート」に出演して、「やっと戻ってきました」と言っていました。私はこのミュージカルは観たいと思いながらまだ観ていなかったので、曲も知らないものでした。
MCの時に佐藤さんが、「このコンサートの曲を決める時に、メンバーがこの曲をやろうと言ってくれて、本当にうれしかった」と言っていました。
ハプスブルク帝国の没落を題材にした内容だそうで、とても暗い曲でした。
11曲目〜民衆の歌(ミュージカル「レ・ミゼラブル」より)
こちらは舞台でも観たことがあるし、何よりヒュー・ジャックマンがジャン・バルジャンに扮する映画版をもう何回見たことか!というぐらい大好きなミュージカルで、ビデオの他サントラまで持っています。
「民衆の歌」は政府に抵抗する学生たちの間で歌われ、さらにラストのシーンでものすごくたくさんの民衆によって歌われるけれど、よくよく見ると歌っているのはみんなもう死んだ人たちばかり…。名曲揃いの作品の中でも、革命を象徴する印象に残る歌です。
ベルベッツバージョンの歌いだしは宮原さんだと思いますが、ザッツ・バリトンとは少し違ったやわらかな声だと思いました。ミュージカルはまた、歌い方がオペラなどとは違うみたい。
この曲はアルバムには入っていません。これまた残念!
やわらかい声と言えば、1月の“live image cinema best”で宮原さんが小松亮太さんのゲストアーティストとして「ロクサーヌのタンゴ」を歌ったとき、小松さんが「テノールの宮原浩暢さん」と紹介してしまい、「小松さん、ぼくバリトンです、、」と言って小松さんが平謝りになったことがありました。
小松さんが「え、おれずっとテノールだと思ってた!」
ハイ・バリトンだとテノールと聞き分けにくいから、やっぱり一般にはバス・バリトンを聴いてはじめて「バリトンだ―」と思うもんなんですね。
「Unchained Melody」のようなムーディな曲だとやわらかく歌うので、バリトンというイメージではなかったかもしれません。
でも「ロクサーヌのタンゴ」は明らかにバリトンぽかったけれど。
小松さんのあわてぶりがすごくて大笑いでした。ライブレポに書くのを忘れたので、ここに書いておきます。
12曲目〜With One Wish
今回のアルバムでは、唯一羽毛田さんがタッチしていなくて、作曲者の葉加瀬太郎さん自らがプロデュースしてボーナストラックとして収録されています。
ギターに鳥山雄司さん(世界遺産・song of lifeの)、そして今野ストリングスの今野均さんも、葉加瀬さんとともにバイオリンで参加しています。
これはジェネリック薬品の「日医工」のCMソングでもある、と黒川さんが紹介していましたが、私の中では、「With One Wish」といえばアモリンこと、フランス人のテノール歌手アモリ・ヴァッシーリくんのあの、live image 13と14での歌唱が忘れられません。
自分の書いたレポによると、「葉加瀬さんがイギリスで、テレビの『ユーロビジョン』(日本の紅白歌合戦みたいな)を見ていた時にアモリ・ヴァッシーリ君の歌を聴き惚れ込んで、東日本大震災後最初に作った「WITH ONE WISH」という僕の曲に歌詞をつけて歌ってほしい、とオファーしたそうです。するとアモリ君は快諾してくれ、とても素敵な歌詞をつけてくれたそうです。」と書いてあります。
そのイタリア語の歌詞を、今回あの「LET IT GO」を「ありのままで」とみごとに訳した高橋知伽江さんが翻訳したそうです。
そして、コーラスアレンジはなんと黒川さん!
男声の力強さが引き立って、ここぞというポイントで佐賀さんの高音が光る、すばらしいアレンジです。
くろちゃん、キャラはあやしいと思ったけど、やるときはやる人なんだ!
日本語で歌う「With One Wish」もとても良いですが、ちょっとアモリ君の歌っていたイタリア語バージョンをベルベッツの歌で聴いてみたい。
あちらのほうが、イタリア語の発音のせいか、声楽で歌うと重さと力強さをより感じる気がします。宮原さんの「Speranza sei〜」を聴いてみたい。
13曲目〜HOMELAND フィンランディア讃歌
奇しくも、私が今楽団で猛特訓中のヤン・シベリウスの「フィンランディア」が選曲されるなんて!
コーラスアレンジとして、どんな感じになるんだろうと思いましたが、私が死に物狂いで(吹奏楽バージョンを)サックスで吹いている「ダラダラダラダラダラダラダラダラダー」などのハードなところは省かれて、実際の管弦楽曲でコーラスが入る部分を取り出して、とても静かに(羽毛田さんいわく、「聖歌隊みたいに5人が一つにまとまって歌う」)アレンジされていました。
ここは私が旋律をソロっぽく吹く個所でもあるので、こんな雰囲気で吹いてみよう、ととてもイメージトレーニングになりました。
そして、いつも舌がマヒしそうになる「タッタタタタタ・タッタッツタ」のところは、伊能さんのバイオリンがゆっくり弾いていて、このくらいゆっくりだと楽なのに、と思ったけど、ゆっくりなりの難しさもあるかも。
ほんとにとてもとても美しいフィンランディアでした。
アルバム収録曲なので、もう何度も何度も聴いています。
歌とは関係ないのだけど、ちょっと意外だったのが曲紹介の時。
「フィンランドの人にとっては『第2の国歌』といわれている…」と言うところを「『第2の母国』といわれている…」と言い間違えてしまい、あわてて言い直した宮原さん。
一番年上で落ち着いている印象があったので、そのとちってあわてる様子が予想外な感じでした。けっこうテンネンな人なのかも…。
14曲目〜Amazing Grace
これはアルバムには収録されていませんが、コーラスが映える美しい旋律の曲です。いろんな楽器、編成で演奏される曲だけど、やはり歌詞が大事な楽曲なので歌唱バージョンが格別です。それも、女声より、男声の方がいいなと思います。
日野さんの、ふつうの音域のテノールがすごく響いていたような記憶が。
弦カルテットもすごく美しくて、心洗われました。ほんと、至福。
この曲でだったか、それともフィンランディアでだったか忘れましたが、羽毛田さんがバンドのみの間奏のところで、ピアノの前で小さく手を動かして指揮をしていました。たぶんそれ、ステージ上の他の人からは見えないんじゃないかなと思ったけど、、(羽毛田さんのポジションは私の作ったステージ図参照)
それとも何か、みんなに見える仕掛けがあったのかな?合わせ鏡とか?
日替わりトークコーナー
次は歌はちょっとお休みで、佐藤さんが「ここでー、ベルベッツが、さっそうとジャケットをぬぎー、日替わりトークコーナー!」
全員ジャケットを脱いで、白いシャツとベスト姿になりました。
2日目のテーマは、「ファンイベントでやってみたいこと」でした。
まず、佐賀さんから。
「ファンの人気投票でコンサートの曲を決める。」
とっても常識的なまじめな提案。
たぶん黒川さんが言ったと思うんだけど、「童謡ばっかりだったらどうしよう」
「犬のおまわりさん」とか「かわいいかくれんぼ」を歌っているベルベッツも見てみたい。なんだか180cmの身長を持て余してしまう感じもしないでもないが。
次に、宮原さん。
「夏にファンの皆さんと浴衣姿で花火を見たい」
でも、東京の花火は人が多すぎて、花火を見たいと思っても人の流れに流されていってしまう、(ここで隅田川花火などで流されていってしまう様子を実演、とってもリアルでした)だから、僕の出身地の静岡の「安倍川花火大会」を見るのはどうだろうか、という提案でした。すいているのでゆったりシートを張ってファンと「たまや〜」とか。東京からも比較的近いしね・・・
ここで誰かが「えちごや〜とか」と言いました。
「なんで越後屋なんだ」と他のメンバーがつっこみ。
次に、佐藤さん。
「温泉6日間ツアー」毎日1人ずつソロコンサートをして、最後の日は5人でコンサートをするそうです。(これ、いいかも!私、詳細にレポートにするから連れて行ってくれないかな…)
そこで日野さんが「で、温泉は混浴なの?」と切り込んでました。日野さん、王子様の仮面を脱ぎ捨てた瞬間。
ところで、かなりファンの平均年齢高いみたいだけど、いいのかな…。
次は日野さん。
「コラボ香水を作ったので、メンバーそれぞれの香りをシンガポールで作る。そして香り付きのコンサートをする。」
シンガポールではみんなで水着でプールに入るとか、日野さんはそういう立ち位置だったんですね。
5人分の香りが混ざると変なにおいがしてくさいんじゃないか、と突っ込まれていました。
最後は黒川さん。
「宮原さんは水泳が得意というのはみなさん知ってると思うんですけど(ジュニアオリンピックにも出たそうな)、ぼくも得意なんです。福井で3位だったんです。
だから、ファンとメンバーでドーバー海峡を横断したい…」。
6チームに分けて、少しずつ交替で泳ぐ…それはムリ!と即座に却下されていました。5番の席の男として、期待を裏切らないくろちゃんでした。
15曲目〜ロッホタンゴ
かっこよすぎて仏倒れしそうな、宮原さんのソロ曲。アルゼンチンタンゴで、バスバリトン(低音域を受け持つバリトン)のための曲だそうです。
この音域、この節回し、シビレます!
ロッホタンゴとは、「赤いタンゴ」という意味だそうですが、スペイン語の歌が初めての宮原さん、何度も聴いて歌って、それを聴いてもらってを繰り返したそうです。
そして、たまたま来日していたこの歌の作曲者のパブロ・シーグレルに監修してもらい、仕上げたそうです。(羽毛田さんのツイッターでメンバーと一緒に写真に写っていた「マエストロ」とはシーグレルさんだったんですね)
アルバムに収録されているバージョンは、live imageの「タンゴ番長」、小松亮太さんがバンドネオンを演奏しています。
羽毛田さんから、今回のアルバム、コンサートにあたって5人が本当に努力を重ね頑張ったんだと聞きましたが、やはりこのクラスの人は才能も間違いなくあるのだけど、それ以上に修正能力が高くないとここまでは来られない気がします。
それなりに自信を持ってやってきたことを変えろと言われた時、いかに新しい到達点に向かって自分を修正できるか?
宮原さんがロッホタンゴについて語っているのを後でパンフレットで読んで、みんなこういう努力を繰り返したんだろうなと思いました。
そんな努力の結果生まれた初めてのタンゴは、とても初めてとは思えず、ほんとにアルゼンチンの人みたいです。
この歌いまわしと声を聴いていると、宮原さんのいろいろな可能性が浮かんできました。オペラも、ミュージカルも、南米系も、なんでもできそう。
で、コンサートでのロッホタンゴですが、通常後ろに控えていることの多いバリトンパートの宮原さんが、一人センターに出てソロで歌い、それ以外のメンバーはなんと、後ろで踊っていました!
ダンスは…普通にこなしている人もいれば、あまり得意じゃなさそうな人もいたような。
声楽家なのだから、もともとこういう踊りをする商売ではないか・・・。
私はステージまで遠かったのでずっと双眼鏡で見ていたのですが、ついつい後ろのダンサーズのほうに目が引きつけられてしまって、肝心の宮原さんが歌っている様子ををあまり見ていませんでした。
歌はしっかり耳に届いていたのだけれど。
ほんと、もう一度観に行きたいです、、。
16曲目〜情熱大陸
長年イマージュ系のコンサートに何度も来ているので、「ここに来てまで情熱大陸か!」と最初はちょっと思いましたが、聴いてみると意外に面白かったです。
バイオリンだからこそ表現できる疾走感が、言葉が入ることで無くなっちゃうんじゃないかと思いましたが、そこは声の迫力でちゃんと成立させていました。
葉加瀬さんの情熱大陸のように、手拍子とかワイパーをお客さんも一緒にやりましたが、ベルベッツ的には「お客さんと一緒にできるこういうのがやりたかった!」と感動しているようでした。そうだったのね。
来年のlive image、ぜひ出演して最後に羽毛田さんと一緒に「どん、どどどん」とガッツポーズしてほしい。そして葉加瀬さんと一緒に熱唱してほしい。
パンフレットに葉加瀬さんとメンバーとの対談が載っていますが、ここで葉加瀬さんが、私が先に書いていた「なぜ自分が声楽が好きか」ということについてぼやっと頭の中で考えていたことを的確に言葉にしてくれていました。
「情熱大陸」を歌として羽毛田さんが取り入れようと思ったのは、「LE VELVETSが器楽的に歌えるからこそできるのであって。・・・」
楽器のように正確に歌えるからこそ、私は彼らの歌に惹かれ、この「情熱大陸」も成り立つのですね。
ところで、葉加瀬さんと言えば今回、コンサートでもアルバムでも歌われた「WITH ONE WISH」と「情熱大陸」の2曲を提供したわけで、音楽監督が羽毛田さんということもあり、客席は「もしかすると、葉加瀬さんゲストで出たりして」という期待は多少あったわけです。
この情熱大陸の曲紹介のところで、「実は今日!」「その葉加瀬太郎さんが」「この会場に!」「来てませんでした〜」・・・「ま、葉加瀬さんお忙しいですからね、、」
これは明らかに、「ぐるない・ゴチになります」で羽鳥さんが「ピタリ賞」がいるかどうかを発表する場面のものまねだったわけですが、たぶん言っていたのは黒川さんだと思う。
(自分の中でへんなのは全部黒川さんになってるかも、、)
17曲目〜'O SOLE MIO
今年のlive imageで佐藤さんが驚異の超ロングトーンをして見せたカンツォーネの名曲。
「TIME TO SAY GOODBYE」や「NELLA FANTASIA」と並ぶ、わかりやすくてよく知られている声楽人気曲です。
今回はイマージュの時ほど長くなかったけど、佐藤さんがやはり強じんな新素材でできたのどを聞かせてくれました。
でも、この曲は彼の高らかなオーソーレミーオーだけが見せ場なのではなくて、そこに至るまでとその後を他のメンバーが交代でソロで歌います。それぞれの声の違いを十分堪能できる、ベルベッツカタログのような曲。
名刺代わりの…と言う感じ。だけど今回は最後の曲だったな。これからもよろしくね、みたいな?
18曲目〜EXILE ダッタン人の踊り
エグザイルといっても、チューチュートレインをやったわけではなく…
クラシックの有名曲、ボロディンの「イーゴリ公」の「ダッタン人の踊り」に、テノールの佐賀龍彦さんが歌詞をつけたオリジナル曲です。EXILE=“放浪者”という意味だそうで、内容的には遠く離れている愛する人を思うラブソング。
遠距離恋愛的なものも意識したそうですが、それだけではなく、紛争やいろいろな事情で離ればなれになったり亡くなってしまった人を想う歌にしたかったそうです。
私はこれの羽毛田さんのピアノがすごく好きで、シンプルにアレンジしていることで声の美しさが引き立ってずっと耳に残っています。
この曲の前だったか後だったか忘れてしまったけど、佐賀さんが5人を代表してお客さんにかなり長い挨拶をしました。
その中で、「日本や世界にはたくさんのグループがあるけれど、LE VELVETSはその中でも一番といっていいぐらい仲の良いグループです」と言っていたのがすごく印象的でした。
なかなかデビューさせてもらえなかったこと、そのためストリートライブをやっていたこと、屋根のあるところで歌うことはめったになかったことなど、自己紹介でおもしろおかしく話してくれますが、やはりそれはそれはたくさんの葛藤があっただろうと思います。
ただでさえバンドとかグループで音楽をやるのは難しいのに、これだけ個性の強いアーティストの集まりであるにもかかわらず佐賀さんが胸を張るほど仲が良いのは、苦労を乗り越えてきたゆえなのでしょう。
どんどん人気が出てきて、やりたかったことができるようになっても、ずっと仲の良い5人組でいてほしいなと思います。
やはり、彼らが5人集結して生まれるハーモニーは宝物だと思うからです。
アンコール Nessun Dorma
アンコールはオペラ「トゥーランドット」の「Nessun Dorma」でした。
羽毛田さんが伴奏するのだから、もちろん“live image style”。伊能さんがイントロの“キューキューキュッキュッ”という部分のバイオリンを弾きました。
私は出産の時、陣痛を待ちながらずっと聴いていたほど「トゥーランドット」が好きで、落ち着きたいときはプラシド・ドミンゴの「Nessun Dorma」をいつも聴いていました。
特に最初の「ネッスンドールマー、ネッスンドールマー」と歌いだすところが大好きなのですが、ベルベッツ版ではこれを佐藤さんと宮原さんが歌います。そして、混声のコーラスが入るところで、日野さんが女声の音域で歌います。
これを聴いて、ポップス寄りではない、ガチクラシックのアリアや歌曲を彼らが歌うのをぜひ聴いてみたいと思いました。
宮原さんと黒川さんのユニット“COME STA?”は、ずばりそのような志向のユニットらしい。
いつかコンサートに行ってみたいと思っています。
終演〜バックステージ
終演すると、放心状態の女性がそこここに。なかなか席を立てない人もいました。
私たちは休憩時間に行けなかった物販に行き、私はアルバム(初回限定盤のほう)を買いました。
友人は日野さんが肩にかけて宣伝していたトートバッグを買うか悩んでいましたが、結局買わず。
楽譜を入れるのにちょうどよいサイズだったんだけど。
グッズなどを買うと「ハイタッチ券」(メンバー5人とハイタッチできる。彼らの長身を生かしたイベント。)がもらえましたが、ハイタッチに並ぶ人の数は尋常ではありませんでした。
私たちもパンフレットを買ったときにもらったのですが、羽毛田さんを楽屋に訪ねる使命があったのでガマン。
いそいで楽屋に向かいました。
以前オーチャードのバックステージでは、どえらく迷子になったことがあったのですが、その時すっかり楽屋への道順を覚えたので、今回はすいすいとたどり着きました。
するとそこはパラダイス…じゃなくて、楽屋に入ってすぐのところに、ハイタッチ会を前に待機する5人組が立っていました。
その前を通って羽毛田さんの楽屋に行きましたが・・・なぜ彼らは2時間以上におよぶコンサートで歌い踊った後なのに、こんなに静かで清々しいオーラを放っているんだ?
みんな疲れている様子もなく、キラキラと輝いていました。(このとき友人はくろちゃんの魔法にかかったらしい。)
そして、私はそこに立つ彼らを見て、また記憶の扉を開きました。
「前にライブ・イマージュの楽屋で、お客さんとして来ていて誰かを訪ねてきていた日野さん、見たことある」
3人ぐらいで立っていたっけ。超記憶症候群か、わたし。
羽毛田さん寄りのライブレポのはずが、羽毛田さんをほとんど見てなかったことがバレバレになってしまいました。
でも、心の広い仕事人である羽毛田さんは「それでいいんだ!ベルベッツを見てくれたのなら、大成功!」と喜んでくださいました。
友人が「羽毛田さんのピアノの音、すごく飛んできましたよ!」とフォロー。
確かに席の場所も場所だったし、音はとっても耳に残りましたよ!
ということで、今日も見事なお仕事でした、監督!