書籍レポート:
「かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄」公式ファンブック
「かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄」は2002年7月にチュンソフトから発売されたゲームソフト。画像・音楽ともに再生能力の高い、SONY Play Station2向けに開発されたため、ゲーム制作の分野以外から一流クリエイターが起用され、発売前から大きな話題になりました。
「日本を代表する9人のクリエイター」として起用されたのは、脚本に推理小説作家の我孫子武丸氏(前作「かまいたちの夜」でもシナリオ担当)、伝奇ホラー作家の田中啓文氏、SF・ホラー作家の牧野修氏、美術監督に「冷静と情熱の間」や「スワロウテイル」「不夜城」などの話題作を手掛けた種田陽平氏、オープニングムービー制作に音楽PV、CMなどで活躍する映像ディレクターの武藤眞志氏、CG制作にはCGアーティストとして世界的に有名な庄野晴彦氏、音楽には、雅楽の東儀秀樹氏、元爆風スランプのパッパラー河合氏、そして羽毛田さん。
発売前後には、ゲームショップの店頭ではこの9人を紹介するプロモーション映像が繰り返し流され、さまざまなゲーム誌やゲーム番組、サイトで取り上げられました。
「かまいたちの夜2」と羽毛田さんの音楽
「かまいたちの夜2」は、サウンドノベルというジャンルのゲームソフト。画面上に映像とともにシナリオが表示され、ときどきいくつかの選択肢が現れます。自分が選んだセリフによってどんどん展開が変わっていくというマルチエンディング形式なので、ストーリー展開は予測不能。
しかもブルーの透明ぷよぷよシルエットの登場人物と、実写とCGが融合したリアルなバックとの対比が不気味で、ヘビーなお化け屋敷に入ってしまったようにビクビクおそるおそる進んで行くことになります。
その恐怖感をさらに倍増させるのが、羽毛田さんらが担当した音楽。特に、羽毛田さんが主に担当した「陰陽篇」は、ビビリやすい人はできれば避けて通りたい、おどろおどろしいストーリー分岐。メディアで話題になった「狂宴」の音楽が流れるシーンは、その中でも恐怖・パニック最高潮なので、なかなか繰り返し聴くというわけには…。ホラー苦手なファンにとっては映画「回路」に次ぐ試練となりました。
公式ファンブック
公式ファンブックは、攻略本とは違って、おもにこのソフトのメイキングやシステムにスポットをあてた解説書。第1章では、ソフトの生まれた経緯や制作過程を監督や各担当ディレクターのインタビューなどで明らかにしています。
ここではサウンドクリエイターの福田康文氏のインタビューを通して、羽毛田さんの音楽制作の様子がわかります。福田氏は、河合さん、羽毛田さんを「プロデュースもなさっているので、アーティストでありながら、まとめることが上手」「すごくプロフェッショナルな方」、羽毛田さんの音楽を「奥行きと広がりがすごくあって、音の空間を重視している」と評価。
興味深いのはレコーディングプロセスの写真。スタジオでの打ち合わせや録音作業中の様子がわかります。
髪長めの羽毛田さんのアップ写真、けっこうめずらしいかも。
今回のオープニングテーマは、羽毛田さんと東儀秀樹さんのコラボレーション。
元になった「かまいたちの夜」のテーマ曲のスコアが載っていますが、これを羽毛田さんがアレンジ。「篳篥」や「笙」といった日本古来の楽器を使い、「スタイリッシュな“和”」というゲームの世界観を表現しています。オープニングムービーは、やはりビビリにはきついですが、美しい音と映像に思わず引き込まれてしまいます。
クリエイターインタビュー
公式ファンブックの第2章は、制作にかかわった9人のクリエイターのロングインタビュー。羽毛田さんのページも6ページあります。羽毛田さんは、当初「サウンドノベル」というジャンルがあること自体を知らなかったので、文字と画面と音楽が絡んだときの印象がどうなるかを、前作を見ながらいろいろ考えたそうです。映画やドラマと違って音楽が支配する要素が大きいので、そのバランスに悩んだとか。イメージ画のような絵コンテをもらって、それをキーボードの前に置いて作業したり、話し合いの過程でゲームクリエイターの人たちが求める「音の印象」を、伝えられた言葉から汲み取るなど、曲作りはなかなか大変だったよう。特に、一番最初の話し合いで制作サイドから提示された全体テーマが「和」。でも、「純粋な“和”だけにはしたくない」。
そこで、気品があると同時にどこかミステリアスな雅楽の要素、和太鼓や民謡のパーカッションに加え、韓国やアフリカのエスニックな楽器を複合させることにしたそうです。その結果、メインのメロディは雅楽の笙や篳篥、リズムは世界各国のエスニックな楽器、和音はストリングスや木管アンサンブルなどの西洋楽器という、不思議な音世界が形作られました。(ゲームソフトの限定版「スペシャルBOX」を買うと付いて来るプレミアムDVDでは、羽毛田さんが実写インタビューで今回使った楽器などについて楽しく解説しています。)
東儀さんとのコラボレーションは、とてもインスパイアされるものが多かったとか。
羽毛田さんは生で雅楽器と仕事をするのは初めてだったので、実際に楽器の特性や音域を知って次々といろいろなアイデアが浮かんだそうです。東儀さんはとても柔軟性のある方で、羽毛田さんのさまざまな要求に快く応えてくださったので、現場でのやり取りの中で出てきたアイデアが面白くて、仕上がりは当初の予想以上のものだったそうです。
「僕の作った曲でさらにイマジネーションが掻き立てられて、ゲームを楽しんでいただければ」と羽毛田さん。「怖い系の曲はヘッドホンで聴いていただくと、怖さが増すかも」とも。それは、、、かんべんしてください!
<余談:その後のかまいたち>
一昨年の夏に始めた私の「かまいたちの夜2」。
もうとっくに完全クリアしていてもよいはず。でも…
鍵が足りないんです(泣)イグアノドンのところがいけないんだとわかってるんですけど、だめなんです(泣)
いつになったらノストラダムスのナゾが解けることやら…。(kingyo 040119)