ラジオ出演レポート:TOKYO FM -Sunday Classic Hour-
“MY HEART STRINGS”
第2回 「高原へいらっしゃい」 (030810 6:00a.m.-7:30a.m.)
「おはようございます、羽毛田丈史です」の声も、心なしかリラックスした感じで始まりました。先週の放送を自分で聴いてみた所、「割りにいい声してるじゃん」と思ったとか。「自分の声を聴くのはものすごく恥ずかしいものですが、どこか愛着が湧いてくるというか、1時間も聴いているとだんだん心地よくなってきて、いいかも、これで食っていけるかもとか思ったりして…スミマセン」と冒頭からいきなりギャグ飛ばしてくださいました。
今日のテーマ「高原へいらっしゃい」
「避暑にいけない方にも、高原へ行った気になるような曲を聴いて、避暑をしていただく」という趣向。
<1曲目 グリーグ「組曲ペールギュントより 朝」>
「日曜日の朝、高原で聴くには、これに勝る曲はないですね…」
<2曲目 ボロディン「中央アジアの草原にて」>
<3曲目 「グリーンスリーブス」>
##ゲストの山田太一さん登場。
羽毛田「ちょうど高校生の頃、“岸辺のアルバム”に夢中になって、今でも頭に焼き付いている。主題歌(ジャニス・イアンの“Will You Dance”)がかかると、悲しくてつらい感じが緩和され、優しい気持ちになれた。」
山田「音楽の力ですね。」
羽毛田「その後も“ふぞろいの林檎たち”などもかじりついて見ていましたから、こうしてお話をうかがえるのはすごくうれしいです。」
山田「私もうれしいです。高原へいらっしゃいのリメイク版の音楽をやっていただいて…」
羽毛田「お話が来たとき、あの山田太一さんのドラマ、ということですごくびっくりした。音楽を作るとき、まだドラマはできていなかったのでオリジナル版を見せてもらったが、おもしろくてすごい勢いで見せてもらった。」など。
##今回は他の方が脚本を書いているし、全然タッチが違うけれど、羽毛田さんの音楽は楽器をおさえて、今風に癒しの味があって、高原らしいさわやかな感じもあって、山田さんはとても気に入っているそうです。
<4曲目 羽毛田丈史「高原へいらっしゃい」のテーマ>
##「ドラマの映像が目に浮かんでしまって…それから、台詞がそれにかぶってもいいように作ってらっしゃいますね。」と山田さんのするどいご指摘。確かにそうだな…
羽毛田さん曰く、ただ流れるだけではなくて、そこに何かちょっとだけ新しいものを入れたいということで、アイルランドの楽器を使ってみました、とのこと。今回はほとんどアイルランドの楽器を使っているそうです。アイルランドの音楽はどこか日本の音楽と似た郷愁感がある、ということでした。
##その後、ドラマの発注のされ方(多少しばりがあった方が作りやすいなど、作曲と似ているそうです)について話がはずみました。
##名作「ふぞろいの林檎たち」の出来上がった経緯について。
大学生がドラマを見なくなったということから、「では大学生のドラマを作ればいい」ということになったそうです。ちょうど放映時、羽毛田さんも大学生でまんまとハマったそう。自分を投影したとき「自分の恋人は手塚理美」だったそうな!
<5曲目 山田太一さんの選曲
アルゴ・ペルト「フラトレス」by ギドン・クレーメル&キース・ジャレット>
##お2人とも、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」に感銘を受けられたそう。羽毛田さんは当時「キース・ジャレット風!」とピアノで真似していたとか。
##その後、山田さんの脚本づくりの興味深いお話が続きます。
脚本を書くときは、ひそかに自分で流れる音楽を決めて書くそうです。羽毛田さんは、映像に音楽をつけるとき、それ以外の映像や写真を見て作ると、そこから生まれた違和感で、思わぬ効果が付くことがあるとか。
##山田さんの「生きるかなしみ」というアンソロジーのお話に移りました。山田さんの「なんでも人間中心だと、テクノロジーが進歩しだすと歯止めが効かない。
あっという間に新しい物が生み出されて、物を愛するひまがない。」「人間は可能性があるどころか、限界だらけで無力なものだ。生きていることには、いつも悲しみみたいなものがつきまとう。そういう生きる悲しみにもう少し敏感になってもいいんじゃないか。」
「人でもなんでも、何かを愛している人は、自殺しようとしないし人を傷つけたりしないと思う。」というお話、とても感銘を受けました。
##このあと、今後の予定など話されて、山田さんは退場されました。
<6曲目 羽毛田丈史「この空と大地の出会う場所」>
「僕としてはすごく気に入っている曲。アイリッシュミュージックの雰囲気を持ったピアノの小曲を作りたかった。草原や高原というと、僕の中ではアイリッシュミュージックが浮かぶ。ここ1、2年、アイリッシュミュージックをよく聴いている。」など。
>>この曲はTVアニメ「魔法遣いに大切なこと」のメインテーマ。羽毛田さんの楽曲の中で、私が一番好きな曲です。(k)
##ここから、アイリッシュミュージックの話になりました。
「ケルト民族が分布していった地域の音楽。イギリスで言うと、スコットランド、ウェールズ、アイルランドなどがケルト圏。独自の民謡のスタイルを持っていて、独自の笛アイリッシュ・ティン・ホイッスルやアイリッシュ・ロー・ホイッスル、ボーランという太鼓を使う。
ダンスチューンの“リール”、8分の6拍子の“ジグ”などがある。イギリス以外にも、フランスのブルターニュにも分布していて、ここでもケルトミュージックが盛ん。
それから、僕も最近知ったのですが、スペインのガルシア地方(大西洋に面した北西部)もケルト文化圏。だからアイルランドと似た音楽があって、スパニッシュが少し入っていておもしろい。ガイータと呼ばれるバグパイプを使っている。せっかくなので、今日はアイルランドの音楽を少し聴いていただこうかなと思って、ちょっと探してきました。」
<7曲目 チーフタンズ「ガルシアン序曲」>
「チーフタンズは70歳くらいのおじいちゃんばかりで、残念ながら昨年1人お亡くなりになったが、今でも大活躍で、世界中をまわっているアイルランドの国民的バンド。
“サンティアゴへの巡礼”という、ケルト文化をたどるアルバムがある。サンティアゴはガルシア地方にある大聖堂で巡礼の地。ケルト文化はガルシアから大西洋を渡ってキューバ、南米、カリフォルニアへと渡り、アメリカのカントリーの源流となった。
「 “ガルシアン序曲”は、チーフタンズではとてもめずらしい、オーケストラとアイリッシュのバグパイプであるイーリアンパイプを使って演奏した曲。4、5曲から成る10分以上の大曲なので、イーリアンパイプがフィーチャーされているところを聴いていただきます。」
「アイリッシュミュージックは、アメリカのブルーグラスやロックの元になっている。
アイリッシュミュージックが形を変えて、マウンテン・ミュージックとなり、南部に行き着いたところで、カントリーミュージックの源流となる。
アメリカン・ロックは、カントリーとアフリカからきた黒人のブルースが融合しているが、カントリーの元がアイリッシュ・ミュージックだということは知られていないところ。
「そのカントリーがカントリーロックとなり、イーグルスやドゥービー・ブラザーズといった70年代に一世を風靡したアメリカン・ロックの元になってくる。僕たちが聴いているポップスなども、使われている楽器や歌い回しなど、ケルト・ミュージックはどこか元になっている部分がある。だからなつかしいと感じるのかなと思う。特にティン・ホイッスルのメロディーなどは、日本の尺八とも似て、すごく郷愁感がある。
<8曲目 「King of the Blind」より “The Fairy Queen”>
バロック音楽とケルト音楽はお互いに影響を与え合ったというのが、この曲を聴くとよくわかる。
中世にアイリッシュ・ハープのために書かれた曲を、ロー・ホイッスルを使って古楽スタイルで演奏している曲。
>>この曲もとても気に入ってしまいました。CD手に入りにくいらしいけど、ほしい!(k)
##来週のテーマは「星とロマン」、ゲストは医学博士の青山圭秀さん(「アガスティアの葉」の作者)だそうです。そうか!“LEAF OF AGASTYA”!楽しみです!
今日は山田さんの本、チーフタンズのCDなど、いろいろ読みたい!聴きたい!が増えてしまいました。(kingyo)(030810 HAKETA Position掲載)