live image 7 東京公演3days
080509-11 kingyoの東京3days雑感(その2)
<開演〜フロント・アクト>
9日は東京初日ということもあって、ちょっと緊張した雰囲気もあるのかなと思いましたが、席に着いてみるとなんだかとてもリラックスした感じ。初期の頃はここに座っただけで緊張してしまったけれど、もう8年もlive imageを見守ってきたホールですからまさに「ホームグラウンド」という感じです。
私のように、すでに他の公演に行っているらしき人もいるようで、明らかにリピーターが多い感じでした。「今日はすごくいい席なんだよねー」と言いながら通り過ぎてゆく人もいたりして。楽器のケースを持っている人も何人かいました。
しかし、この日一番目に付いたのは、スーツ姿のビジネスマンでした。けっこう年齢高そうな方もいっぱい。スポンサーや関連企業の方々でしょうか。もしくは、イマージュが好きで会社帰りに趣味で来られているのかも。大学生ぐらいの若い人もかなりいましたが、老若男女幅広く集まる土日の公演とは明らかに違う雰囲気の会場でした。
そして、土日に行われた2日目、3日目のお客さんを見て思ったのは、相変わらず幅広い年齢層の人々に支持されているなということと、20〜30代ぐらいの若い男性がかなり多いことでした。「癒し系」といえば、なんとなく女性好みなイメージがありますが、羽毛田さんをはじめimageアーティストたちの音楽の大変に骨太な側面が、若い男性をも惹きつけるんだなと思いました。そういえば、名古屋で羽毛田さんのサインを持っていた人も若い男の人だったっけ。
5000人を収容するホールAですが、初日は残念ながらかなり空席が目立ちました。
私の周辺の、スピーカーのまん前あたりはお客さんを入れていなかったし、2階席は全く誰もいませんでした。後でネットで見た元ちとせさん関連のニュースでは「3000人の観客を前に熱唱した」と書かれていましたが、1階は、だいたい埋まっているような感じには見えました。2日目、3日目は完売ではなかったようですが、2階席にもたくさんお客さんがいました。
東京の公演はスペシャルゲストが出演することも多く、昨年などは羽毛田さんの「失われた文明 インカ・マヤ」で最終日に元ちとせさんが生歌披露するというサプライズがありましたが、今年の特別は「フロント・アクト」でした。
「もう開演かなー」とぼんやりステージを見ていたら、最初のブザーが鳴った直後、私の頭上のスクリーンが真緑になっているのに気が付きました。見上げると「フロント・アクト アウラ」と書いてあって、下手から緑のドレスを着た5人の女性が出てきました。そして、1人が自分たちの紹介をしたあと(Sony有機ELテレビのCM曲を歌っているクラシック・ア・カペラグループのアウラです。)ビバルディーの「春」とimage7収録の「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」のlive imageバージョン(「ハッピー・コンサート・トゥ・ユー ディア・イマージュ」と歌い替えた)の2曲を披露しました。一番大柄な女性がアルトのパートを歌っていたのですが、ビバルディーの「春」ではありえないくらい低い声を出していて、人間の声とは思えないような波長で低音が聞こえてきました。低音域がものすごく広いんだろうな。有機ELテレビはコンパクトで映像がものすごくきれいですが、この小柄な女性たちもとっても美しい声の持ち主でした。
その後の2公演でも同じようにフロント・アクトとして美声を披露していましたが、MC役は毎回違いました。緊張気味でかんじゃったり、最終日などは客席のほうがなかなかフロント・アクトが始まったことに気づかず、5人が登場してしばらくしてからやっと拍手がおこったり、双方慣れてない感じでした。でも、なんだか開演前にホールの空気が浄化されたみたいな心和むひとときでした。
<オーケストラ・イマージュ〜Song of Life>
「サイダーハウス・ルール」のテーマが流れる中、オーケストラ・イマージュが暗いステージに登場するのは見慣れたシーン。長身のベース担当渡辺等さんが下手チームの先頭を切って、早足でベース席に向かうのもおなじみ。リピーターが多いと思われる客席からはいつものように盛大な拍手がおこります。このあたり、8年の積み重ねで培われた出演者とお客さんとの連帯感を感じます。
今年トップをオーケストラ・イマージュにして演奏曲を「Song of Life」にしたのはものすごくいいアイディアだったなと思いました。やはり「この曲で始まる!」という感じがしますよね。そして、以前は羽毛田さんがこの曲のピアノを弾いていたせいか、今回も羽毛田さんが演奏していると思っていた方も多いようですが、現在はオーケストラ・イマージュコーナーのピアニストはキーボード・サックス(&コーラス)担当の青柳誠さん。もともとあまり体を動かさず、かちっとした姿勢でピアノを弾く青柳誠さんですが、公演を重ねてきた結果でしょうか、より体に動きが出て、アドリブもばりばりと効かせていました。
この東京3daysのうち、私が個人的にベストステージだと思ったのは2日目でしたが、この日のSong of Lifeは実は出だしに少し違和感がありました。気のせいだったかもしれないけど、誰かちょっと息が合わなかったか?という感じ。このオケではすごくめずらしいので気が付いたのだけど、逆に考えるとこの広いステージで、指揮者なしで、息を合わせるだけで大勢がぴったり演奏できるというのは、本当にすごいことだと思います。
<松谷卓さん>
今年のステージのキーパーソンは誰?と問われれば、私は「松谷さん」と答えます。トップバッターだった彼の「Stargazer」のでき具合が、客席の雰囲気を作ったような気がするのです。それほどにお客さんを魅了するすばらしいアレンジで、各プレイヤーもすばらしかったわけですが、この曲を端正にまとめれば、第1部は静かに進行して行ったし、この曲が爆発すれば、早々に客席にも火がつきました。特に2日目の爆発はすごくて、彼の演奏は私が聴いた中ではこの日がベストでした。スタンディングオベーションこそなかったものの、ものすごい喝采で客席側に最初の火種が投入された感じでした。
しかし、こう何度も繰り返し聴くと、だんだん自分の意識がスタッフに近くなってくるというか、松谷さんの「Stargazer」にお客さんが大喝采なのを見ると「ね、ね、ほらすごいでしょ!」と言いたくなるし、思ったほど爆発しなくてきれいにまとまってしまうと「あーん、ほんとはもっとすごいんだよー」とちょっと欲求不満になったり。
ところで、東京の松谷さんについてはちょっとびっくりなことがありました。
まずびっくりだったのが、松谷さんのトレードマークの白髪。くりんくりんに伸びていて、ボリュームアップしていて、ますます大好きなヒツジちゃんに近づいていました。
そして、2日目のMCだったと思いますが、直前にニューアルバムのジャケット写真ができあがってきたけど「ベルバラかよっ!」な出来上がりだった、という話をしたときのこと。「あのね、それがね、僕、髪がこんなじゃない?」あれ。松谷さんがオネェ言葉しゃべってる。こんなしゃべり方する人じゃなかったのに、とちょっと衝撃でした。お客さんのギョっとした雰囲気を察してかどうかわかりませんが、翌日のMCではオネェなしゃべりっぷりは消えていて、普通に「ベルバラかよっ」と言っていました。ぜひ来年は「ベルバラかよっ」な衣装にもチャレンジしていただきたい…。
<小松亮太さん>
小松さんの演奏は東京でもムラなくすばらしく、足立区の土手から見た荒川放水路であるはずの風景は、イタリアの古い町並みを映して流れる異国の川のように思えました。サビのところの羽毛田さんの流れるような伴奏は、まさに川の流れそのもの。羽毛田さんはピアノで水を表現するのがとっても上手です。越田太郎丸さんのカヴァキーニョがトレモロでメロディを奏でると、ますます荒川土手はヨーロッパの風景に見えてきます。ちなみに、私が選んだこの楽曲のベスト演奏は、東京の最終日、テレビカメラの入った日でした。さすが小松さん、照準をぴったり合わしてますね!
小松さんのMCは「僕は今年デビューして10周年を迎えるんですが…」で始まりましたが、いつもここでお客さんが拍手をします。東京3日目だけに来た方は、この拍手で小松さんがなぜ「今日はなんだかあったかい気がする!」と言ったのかわからなかったと思いますが、実は2日目、「10周年を迎えます」と言っても会場がシーンとしたままだったんですね。しゃべるテンポが狂ってしまった小松さん、「ここで、拍手が、ほしい!」と自分から拍手要求しちゃって、きっと要求されたお客さんも「あれ?」と思った人がいっぱいいたと思うのですが、たまたま拍手を引っ張る人がいなかったみたいです。こういう細かなお客さんのリアクションとか会場の空気も公演日それぞれ全然違って、その空気を読みながら出演者もスタッフも進行していくのでしょう。
土手の話はどこの公演でも同じような感じで展開していましたが、今回は「ここは東京ですからストレートに言ってしまうと足立区・墨田区・葛飾区…」と言ってました。
いや、名古屋でもストレートにおっしゃてましたが…。
ところで、小松さんは「夢幻鉄道」のMCでいつもお子さんの話をしていましたが、今回初日にニュートピックスがありました。
「さっき舞台袖で音楽監督の羽毛田さんと話してて、『小松君、子どもは見に来ないの?』と聞かれましたが、うちの子ども達が来たら、楽屋が収拾つかなくなりますから絶対連れて来ません」かなりやんちゃなお子様方のようです。
初日の席からは、「夢幻鉄道」の「パーカッショニスト羽毛田さん」の奮闘っぷりがとってもよく見えましたが、見せ場のグランカッサはやはり足しか見えませんでした。あの黒い箱はなんのためにあるのかな…。
ところで、小松さんのコーナーでも1つ気になったことが。
初日、「夢幻鉄道」の演奏を終えた小松さん。本当ならそのまま退場なのですが、急いでマイクを取り上げて、「これを言い忘れたら怒られるので」とクラブ・イクスピアリでのライブの告知をしていました。でも、その後2日目も3日目も告知はされず…。怒られてないかしら、小松さん、とちょっと心配。
<宮本笑里さん>
か細くてお人形さんのように愛くるしい笑里さんを見ていると、ついつい大丈夫かな…といらぬ心配をしてしまいます。特に思い出深い東京国際フォーラム(彼女がlive imageと初めて出会った場所)での初日、5000の座席の並ぶこの大ホールで、いったい彼女がどんな演奏をするのか、やはりハラハラドキドキせずにはいられませんでした。しかし彼女は立派なプロの演奏家、そしてミタメからは想像できないぐらいすごい度胸の持ち主でした。堂々としていて音もよく響いていて、特に2日目には川口以来とも思えるベスト演奏を聴かせてくれました。
振り返ってみれば、彼女はどこのホールの舞台に立っていても特に変わった様子もなく淡々と、演奏に集中しているように見えました。ただ、東京3日目はお父さんの宮本文昭さんが来られていたためか、カメラが入っていた緊張感からか若干ボリュームが抑え目だったような気がしましたが。でもそれもほんの少しの違いで、初めてのツアー参加ながら、立派に自分のコーナーを切り盛りしていました。そして、MCは何回やっても苦手そうだったけど、お父さんのことを語るときはたとえご本人を前にしようが相変わらず辛口で、、、。
雑誌のインタビュー記事で読みましたが、音楽家として生きることを決意した笑里さんに、お父さんはとても厳しく接したそうで、涙で練習用バイオリンのニスがはげるほどだったとか。音楽の世界の厳しさを知るお父さんだからこそだなと思いましたが、私の斜め後ろに座っていらした宮本さんは、娘さんのステージをどんな気持ちで見つめていらしたのだろう、と思いました。
ところで、この3daysの後笑里さんの演奏を思い出そうと思って「Fantasy for Violin and Orchestra」と「I Need to be in Love」の収録されている「fantasy」を聴き直しましたが、大勢のお客さんの前でのライブを重ねた結果か、CD音源よりも笑里さんのライブでの演奏がずっと表現力豊かになっていたことに気づきました。これからどんな風に変化していくのか、本当に楽しみなアーティストです。
<加古隆さん>
今年の加古さんのコーナーは、新旧の大作が3つ続きました。オーケストラ・イマージュの力量によって出来栄えがかなり左右される曲ばかり。優秀なオケメンバーの腕の見せ所でもあります。特に、「ポエジー」は難しそう!!
そして、フォーラムのようにハコが大きくなればなるほど、加古さんの作品は良さが引き立つような気がします。特に「パリは燃えているか」はそうで、今年も私の「ベスト・パリ燃え」はフォーラムの、それも2日目の演奏でした。
ところで、私は川口のレポでこの「パリは燃えているか」でスクリーンに映し出された映像を「アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品にありそうな街角の情景・・・」と書きましたが、実はこれらはほんとにブレッソンの作品でした。こちら↓のサイトでブレッソンの写真を見ることができますが、実際にlive imageで使われた写真も掲載されています。
http://www.magnumphotos.co.jp/ws_photographer/hcb/
アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真は以前ゴンチチのコーナーでも使われましたが、楽曲を聴きながら20世紀の偉大な写真家の作品を鑑賞できるなんて!まさに「贅沢な空間」です。
このように、回を重ねるごとにスクリーンに流れる映像がすばらしくなってゆくので、パンフレットにぜひ映像の解説も入れてほしいなと思います。ただ流れてゆくのを見送って、自分の心に引っかかったものが記憶に残ってゆく、というのもいいですが、どうもそれだけではもったいない気がするのです。ぜひご一考いただきたい…。
第2部に続く・・・